本棚通信URL変更のお知らせ

ご案内がずいぶん遅くなりましたが、本棚通信はつぎのURL先に移動となりました。 引き続き週1ペースで更新を続けておりますので、今後も変わらぬご愛顧をお願いいたします。 http://www.keibunsha-store.com/archives/category/hondana (保田)

京都で寺カフェ

『京都で寺カフェ』(早川茉莉+すみれ図書室 / 大和書房)。本の題名をみて膝を打ちました。ものの見方をスライドさせて、ただしい名前を与える鋭いセンスにです。飽和状態にあるといっていい京都本のジャンルの中でも、「お寺」と「カフェ」は揺るがぬツイ…

熱闘! 日本美術史

年始からこのかた、とんでもなく奇天烈な本を眺めていました。世界の舞台で活躍する美術作家・村上隆さんと、近世絵画に新しい文脈を探った美術史家・辻惟雄さんの共著『熱闘(バトルロイヤル)! 日本美術史』(新潮社)です。 もともとは「芸術新潮」誌上にて…

朝のはじまり

京都生まれ、奈良在住の詩人、西尾勝彦さんが2010年に刊行された作品集『朝のはじまり』(Booklore)。しばらく完売状態だったこちらが、このたび重版となり、当店も再び入荷いたしました。 ガケ書房の山下賢二さんや羊草の森文香さんらが参加し、年一回ひっそ…

理不尽な進化

12月上旬に神保町に出かけた際、東京堂書店の新刊コーナーで目に入ったのが本書『理不尽な進化』であった(上階には特集コーナーもあった)。当店でも取り扱いはあるのだが、並ぶ場所が違うと全く違う本のように思えるから不思議である。鈴木成一デザイン室…

アラン・マンジェル氏のスキゾな冒険

今年私がであって強烈な印象を受けたのが、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の映画作品群。最新作『リアリティのダンス』をはじめ、その日本公開に併せて夏にみなみ会館で企画された『エル・トポ』『ホーリー・マウンテン』『サンタ・サングレ』の3本立て上…

オリーブのお勉強

来週18日(木)、当店コテージにて開催いたします、山崎まどかさん×多屋澄礼さんのトークイベントの予習にと、山崎さんの著書『オリーブ少女ライフ』(河出書房新社)を読みました。平成生まれの私にとって、雑誌「オリーブ」とその年代のおしゃれをとりまく文化…

肝をゆるめる身体作法

先日、紀伊国屋書店が主催する、内田樹さんの講演会へ参加しました。今年4冊目となる単著での新刊『街場の戦争論』(ミシマ社)刊行記念のイベントでしたが、ちょうど衆院解散が決定した時期と重なったこともあり、日本の行く末についてホットで含蓄あるご高見…

『富士日記』(著者:武田百合子)の上巻を読み終えて。

12/17(水)の20時から、当店イベントスペース・コテージにて【コテージの読書会 vol.1】(主宰:ミズモトアキラ氏)が開催される。課題図書は、武田百合子の『富士日記』。日記文学の最高傑作と名高い本書だが、読み手の私は日記文学に触れたこともない超初…

なんたってドーナツ

『なんたってドーナツ』(ちくま文庫)は、編集者/文筆家の早川茉莉さんがドーナツをテーマに、古今の短い読み物を選び出し、書き下ろしをまとめられたアンソロジー。書き物をお仕事とされる方のほか、編集者の三島邦弘さんや丹所千佳さん、イラストレーターの…

朝露通信

小説家、保坂和志さんの新作『朝露通信』。じつに不思議な感触の中編です。書き出しはこう。「たびたびあなたに話してきたことだが僕は鎌倉が好きだ」。ヴィクトル・ユゴーの『ライン河幻想紀行』から引用したものだと作家本人がおっしゃるのを聞きました。…

悪童日記

映画『悪童日記』を劇場で観ました。私は先に原作の翻訳小説(アゴタ・クリストフ著 堀茂樹訳 / 早川書房)を読んでいたので、映像で後追いするかたちになりました。こうすると物語の筋が頭に入っているので、映画の展開が読めずはらはらする楽しみは減ります…

『ひとり料理 これだけあれば』、があれば。

10月初旬に『ひとり料理―これだけあれば―』(京阪神エルマガジン社)が店頭に並んだ時、「あぁ、やっぱり料理しなければならないのか」と感じたのを覚えている。こういう書籍が出版されていることはおそらく単身者の食生活が想像の通り悲惨な状況だからだろ…

いつか来た町

ぼんやりしているときによく、ここではないどこかの場所を考えているときがあります。歩いてすぐ行ける場所であったり、自転車やバスを使って足を伸ばしたり、電車を乗り継いでたどり着く街。長い時間かけて行きつく道。自分が歩いたときのことを思い出した…

幸福と想像力

今回ご紹介するのは、フランスの哲学者/教育者アランの『幸福論』です。本名エミール=オーギュスト・シャルティエ。ナポレオン3世の時代に生まれ、二つの大戦を経て1951年に83歳で天寿を全うしました。46歳のとき志願し第一次大戦に従軍、名門校の教職ポス…

作家の手紙でお手並み拝見

思えば手紙を書くことがありません。小学生中学生のころ、わざわざ投函するほどもない近所の友だちへ年賀状を出したりしていましたが、あれだって印刷された書面のすみにひとこと書きつけるだけでした。手紙をもらったこともありません。だから手紙を読む自…

読書の季節にぴったりの大型評伝

ずしりとした一冊。平積みにしていても、そこだけ重力が異なるような存在感があります。じっさいの分量以上に重厚な雰囲気。タイトルも意味深です。表紙の装画に使われたダーガーの、樹上でほほ笑むヴィヴィアン・ガールズはいったい何を示唆するのでしょう…

ミシマ社さんと2冊の新刊

先日。川端丸太町へオフィスが移ったミシマ社さんで行われた、刊行記念のパーティへお呼ばれしました。このたびの新刊は、『近くて遠いこの身体』(平尾剛著 / ミシマ社)と、『失われた感覚を求めて 地方で出版社をするということ』(三島邦弘著 / 朝日新聞出…

毎夜一話のたのしみ

お彼岸を前にして、朝晩ずいぶんと過ごしやすくなっています。日没の早い気がするためか、就寝時刻まで余裕のある感じがして、とっくり読書へ耽るという方も少なくないのではないでしょうか。騒々しい蝉も秋の虫にかわって、月あかるく空は静まり、いつもよ…

まっとうさ

手にしたとたん、特別だと直感する本があります。自分にとってということでなく、個人の尺で計れない文脈に属しているような感触です。ご紹介する『大坊珈琲店』はそのひとつ。昨年末、38年間の営業にピリオドを打った喫茶店のお話です。 お店じたい、そうい…

役に立たないマナー本

先月、生活館の特集棚では『レイギサホウのすすめ』と題して礼儀作法やマナーに関する書籍を集めてみた(スタッフブログはこちら)。今回はその中でもお遊び感覚で並べてみた2冊をご紹介したい。 1冊は『クマのプーさん エチケット・ブック』。E.H.シェパ…

巷の物語

当店でコンスタントに売れつづけている『心に残る名作コピー』『物語のある広告コピー』をはじめとする「広告コピー」シリーズ。読む人に強いインパクトと心地よい余韻をもたらす優れた作品を紹介していて、最新刊『物語のある広告コピー シリーズ広告編』も…

存在しない場所を訪れる

少しでも時間があると、どこかへ出かけたくなる。先日の台風や大雨で京都は荒れに荒れていたが、ここ数日は打って変わって快晴、というか蒸し焼けるような暑さに参っている。こうも暑いと、京都市という内陸の土地に住む私としては海が恋しくなる。 そんな時…

百年かかる孤独の読書

いつも年の暮れになると私は、年内読みかけだった本を集め、清算する意味で気合いを入れて読書に励みます。と同時に、新年明けてはじめに読む本をどうしようかと心を躍らしながら思案を巡らします。今年の書き初め、ならぬ読み初めに選んだのが、ガルシア=…

便覧に載らない名作

ほのぼのした表紙のイラストに惹かれて手に取った『てんやわんや』(ちくま文庫)。ひっくり返せば昭和を代表するユーモア小説とありますが、私は獅子文六の名前を知りませんでした。著者略歴には本名・岩田豊雄とあり、むしろこちらのほうにピンときたのが不…

ゴジラの記憶

ゴジラを通過せずに子ども時代を過すのは難しい。先月、ゴジラ生誕60周年を記念して、全国の東宝系で初代『ゴジラ』(1954)の上映が行われた。荒ぶるゴジラの姿を大きなスクリーンでぜひとも目撃したいと思い、私もでかけた。 特撮ファンで観客席は埋まってい…

中川ワニさんのジャズ哲学

珈琲焙煎人・中川ワニさんの趣味はCD鑑賞。収集の中心はジャズ、とりわけ現代ジャズに特化している点がおもしろく、めずらしいと思います。そのコレクションから選りすぐりを紹介したのが、そのものずばり『中川ワニ ジャズブック』。 ここ京都の街には新旧…

英米選りすぐりの怪談物語

こう暑くてたまらない季節になるとほしくなるのが、身を凍りつかせるような恐怖話。昔ながらの風物詩というのか、読めば体温が下がるといった実際的な効用は知りませんが、よい物語へ没入すると暑さを忘れるということはあります。老若男女かかわらず強い関…

ゴーリー絵本の描線

今月より当店オンラインショップにてご紹介している「エドワード・ゴーリーとこわい絵本」。河出書房新社より新訳『蟲の神』の刊行と、ゴーリー絵本の全点重版を記念し、またこれらの翻訳を手がけられた柴田元幸さん責任編集による『Monkey vol.3』の特集に…

つながっている紙

本屋で働く端くれとして、本を読んではじめて知って恥ずかしくなることがあります。こんなことを自分は知らなかった、というより、そういうことへ関心を持たなかった自分がです。 たとえば本で使われる紙について。「『文庫っていうのはね、みんな色が違うん…