定番

毎夜一話のたのしみ

お彼岸を前にして、朝晩ずいぶんと過ごしやすくなっています。日没の早い気がするためか、就寝時刻まで余裕のある感じがして、とっくり読書へ耽るという方も少なくないのではないでしょうか。騒々しい蝉も秋の虫にかわって、月あかるく空は静まり、いつもよ…

巷の物語

当店でコンスタントに売れつづけている『心に残る名作コピー』『物語のある広告コピー』をはじめとする「広告コピー」シリーズ。読む人に強いインパクトと心地よい余韻をもたらす優れた作品を紹介していて、最新刊『物語のある広告コピー シリーズ広告編』も…

便覧に載らない名作

ほのぼのした表紙のイラストに惹かれて手に取った『てんやわんや』(ちくま文庫)。ひっくり返せば昭和を代表するユーモア小説とありますが、私は獅子文六の名前を知りませんでした。著者略歴には本名・岩田豊雄とあり、むしろこちらのほうにピンときたのが不…

ゴジラの記憶

ゴジラを通過せずに子ども時代を過すのは難しい。先月、ゴジラ生誕60周年を記念して、全国の東宝系で初代『ゴジラ』(1954)の上映が行われた。荒ぶるゴジラの姿を大きなスクリーンでぜひとも目撃したいと思い、私もでかけた。 特撮ファンで観客席は埋まってい…

視るポエジー

新しい本を買えば、巻いてある帯をゴミ箱に入れ、カバーを取っ払って、厚い単行本ならばめくりやすくするため開いたページをぎゅうぎゅう押し付ける。中身が読めればそれで良いといったような、ある種テキスト原理主義の読者だった私は、正しく本の愛好家と…

京職人の経緯

京都へ住んで五年と半年になります。いろいろな知らない場所を探検しました。 なかでも心引かれるのが、千本今出川を中心に半径一kmくらいの円を引いた内側のエリア。何があるというわけでもない、ごちゃごちゃ細かい路地の入り組んだ住宅街です。 いわゆる…

「うれしくて幸せ」

「スポーツ選手が試合前に練習・調整をするように、私も、何日も前から身体を鍛えあるいは策を練り、いい本を安くたくさん買えるようになにものかに祈るといったような、神経をすり減らすきわめて厳しいものなのだ」(本書7-8p)こちらは本書『定本 古本泣き笑…

ことばと遊ぶ本

当店オンラインショップにて新展開の「ことばの本」。 読み物として楽しめる辞典や、風変わりな文章論など、ことばの広がりを考えさせてくれる本を取り揃えております。 この棚から一冊、ウリポ文学の傑作『文体練習』(レーモン・クノー著 朝比奈弘治訳 / 朝…

大坪砂男の本、その他の本

ちかごろ、日本文学の棚で少し異彩を放っているシリーズがこちら。創元推理文庫の大坪砂男全集です。山田風太郎や高木彬光らとならんで乱歩から「戦後派五人男」と呼ばれた、戦後推理小説界の異才・大坪砂男の全貌に触れられる貴重な文庫版全集です。戦後す…