柳瀬正夢全集、刊行開始

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手に取った際のずしりとした感触 と、作品を大胆に切り取ったカバーデザインから、何やらただならぬ佇まいを感じさせる本書。京都左京区の出版社「三人社」より順次刊行が決定した、 画家・柳瀬正夢の全集(全四巻+別巻一)第一巻がこのたび当店の書架に並びました。

19世紀最後の年に生まれ、14歳 で画家を志し故郷の松山から上京。翌年には第二回院展に入選、翌々年には早くも個展を開催するなど、早熟の天才の名をほしいままにした柳瀬。新聞社へ入社 し、似顔絵や漫画、雑誌の挿絵、装幀などの分野で手並みを発揮する傍ら、社会主義思想に傾倒しプロレタリア芸術へ身を投じていく「時代の青年」としての姿 も見せます。とりわけ結成メンバーの一人に名を連ねるダダ組織「MaVo」及び同名の雑誌は、大正アバンギャルド運動の代名詞的存在として後年の日本芸術史に影響を与えることになりました。

1916~27年 の大正期の彼の仕事を収めた第一巻は、「詩/散文・翻訳/漫画/雑誌装幀/単行本装幀/はがき」の六章構成となっており、およそ半分のページが時事漫画、 コマ絵、挿絵といった漫画作品に割かれています。また、三分の一ほどを占める雑誌・単行本装幀の書影も、画家の卓越したデザイン性を示すと同時に時代資 料としての側面も併せ持っています。

美術愛好家だけでなく、戦前の思想や文学に関心を持つ方、グラフィック・アート、デザインを学ぶ方にもお目にかけたい本シリーズ。当店ではオンラインショップでの販売のほか、店頭にてもお手に取ってご覧いただけます。興味をお持ちの方はご来店の上スタッフへお気軽にお声がけ下さい。
なお現在、柳瀬正夢の展覧会が生前それぞれ縁のあった土地で開催されているようです。詳しくはこちらをどうぞ。

 

(保田)