動きの見える絵から、動く絵へ

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物心つく前からテレビや映画館でアニメーションに親しんできた私たちは、絵が動くということの驚きやおもしろさを改めて思うことが少ないようです。だからそのしくみを知るのはずっとあとのことで、知るとパラパラまんがでも遊ぶ楽しみがわかるようになります。

昨年11月より当店COTTAGEにて開催のシリーズ講座「ミッキーはなぜ口笛をふくのか」。講師の細馬宏通先生には、黎明期のアニメを題材に、その発明の道のりや制作者たちのたくらみについて、実写を交えながらお話しいただきました。そのなかに、アニメ映画の始祖と称されるウィンザー・マッケイの短編映画『リトル・ニモ』がありました。早描きの名手としてボードヴィルで活躍した彼の野心作であり、アニメのもつ表現や描画技術の可能性を多く示唆する、アイデアに満ちた作品です。

もとになったのは、マッケイが連載を手がけた新聞コミック『Little Nemo in Slumberland』。こちらの日本語版『リトル・ニモの大冒険』が、フルカラー・大判サイズのビジュアルブックとしてこのたび刊行されました。同作品は文芸雑誌『Monkey Vol.2』でも取り上げられ、柴田元幸さん・きたむらさとしさんが指摘されるように、作者のデッサン力の確かさや優れた色彩感覚が遺憾なく発揮された唯一無二の逸品となっています。画面に充溢するいきいきした「動きの感覚」は、アニメーションの誕生を予感させるにふさわしい仕上がりです。

さらにつっ込んでこの世界を味わいたいという方には、新聞掲載時そのままの雰囲気を再現した『アメリカ新聞コミック傑作選 1903-1944(『リトル・ニモの大冒険』も収録)のご用意もございますので、ぜひ挑戦いただければと思います。

 

(保田)