新書マイブーム

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速水健朗さんの著作を立て続けに読みました。

ふだん新書を手に取ることの少ない私ですが、日々店の棚へ配架する数多いタイトルのなか、惹かれるところがあって購入用に取り分けておいたのがこの二冊。ろくろく著者名も確認しないうち、ざらっと読んだ『1995年』。おもしろく、新書もいけるぞの勢いで続いた『フード左翼とフード右翼』、これを自宅の本棚に差してびっくり。読んだばかりの隣り合った二冊が、同じ著者だったのです。

『1995年』は、一般に平成史の転機と見られる当年を、いったん刷り込みから解き放って再検証する趣旨の一冊。阪神大震災オウム事件等この年に起こったできごとをはじめ、当時の政治状況や世間的なトレンドを思いつくまま列挙してあります。

類書が多いなか、まえがきでも「最低限、懐古趣味を満足させるものにできるのでは」と著者独特の低姿勢が示されます。それどころか1995年といえば、未就学児で物心さえ覚束なかった私。ですが、結果的に興味深く読みました。きっと鋭く現在が意識された上で、個々のトピックの関連づけの仕方と、流れるような文の継ぎようが優れているのだと思います。

一方、「食で分断される日本人」がテーマの『フード左翼とフード右翼』。食べものの選択が政治志向を表し、購買を投票行為と見なした上で、消費者の分布を想定した本書です。自然食や有機野菜の健康志向・地域主義を極左に置き、対してジャンクフード、コンビニ弁当といったグローバリズム甘受のコスパ重視をフード右翼と見る。

もちろん無理を承知で、でも大胆な切り口がすこぶるおもしろい。自分に引き合わせてみて、酒席などで盛り上がるにはうってつけの話題となりそうです。

総じてとっつきやすく、眠りつつありがちな政治思想や時代状況への関心をくすぐり開いてくれる両書。つぎは同じ著者の『ラーメンと愛国』に挑戦しようと考えています。

(保田)