「街の本屋」海文堂書店閉店に思う

f:id:keibunsha3:20140226194336j:plain

 このたびご紹介するのは、神戸の編集会社くとうてんより発行される雑誌『ほんまに』第15号。一読して、悔しくもうらやましいという気持ちを味わいました。特集と題されて「[街の本屋]海文堂書店閉店に思う」。一書店への愛と惜別の念が盛りに盛られた一冊です。


内容は当店オンラインショップの商品ページを ご覧いただくとして、まずはその元利用者より寄せられたメッセージの熱量に圧倒されるようです。しかし、同業者の端くれとして考えさせられるのは元従業 員の方々による寄稿。書店員と名乗るのもためらわれる駆け出しの自分にとって、そこにある一文一語のいちいちが示唆に満ちているように思えます。

印象深い 言葉は数あれど、すぐに思い浮かぶのが平野義昌さんの文にある「なくなる本屋になにか価値があるとすれば、それはさびしがるひとよりも、困る客によってわ かる」という一節。
おそらくこれが「街の本屋」海文堂書店の固持し続けた姿勢であり、共通の心がまえを持つ店員たちが切り盛りしていたーーなんとも興奮するような光景ではありませんか。同時に、あなたの働く店はどうですかと問いを突きつけられるように思います。

書店といえばショッピングモールの一区画、そこには置いていない、アマゾンで注文した本をどきどきしながら心待ちにしている——そんな十代を送った 自分自身と周囲の同世代の姿を見るにつけ、「街の本屋」文化は根のところで死滅しつつあると実感します。そのような文脈であれば、このタイミングでむしろ 惜しまれつつ有終の美を飾ることのできた書店は幸せだったのかも知れない、と暗い憧憬がよぎったりもします。

恥ずかしながら閉店の報によってその存在を知り、滑り込みで一度きり訪れただけの自分は、今さらながらに困るお客となっているのです。
 


(保田)