中川ワニさんのジャズ哲学

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珈琲焙煎人・中川ワニさんの趣味はCD鑑賞。収集の中心はジャズ、とりわけ現代ジャズに特化している点がおもしろく、めずらしいと思います。そのコレクションから選りすぐりを紹介したのが、そのものずばり『中川ワニ ジャズブック』。

ここ京都の街には新旧とりまぜ多くのジャズ喫茶があり、私も聴きたくなるといくつかお気に入りのお店へ足を運びます。ただ、ジャズ100年史それぞれの黄金時代に強みを持った傾向的なお店がありますが、いまの若いミュージシャンを積極的にかけるところはなかなか見つかりません。むしろ、しゃちこばってジャズ喫茶と謳わないカフェやバーのほうがよく流しているのかも知れません。

だからか年季のいったジャズファンによって、世界の日々更新されていく新譜が一冊のカタログにまとめられるのは新鮮に思えます。喫茶は入り浸っても、ごくたまにしかCDショップを覗かない私にはなおさらのこと。それでも、知らない名前のミュージシャンばかりというのがなんだか清々しい気持ちがします。

きっとそれは著者の文章に説得力があるためでしょう。ふつう、いくらか自分のわかる分野内でのセレクトを判断して、はじめて選んだパーソナリティの目(耳)が信用できるわけです。が、ここでは中川さんの音楽への向かい方や、それ以外のたとえばコーヒーや旅に対する姿勢に共感できるからこそ、この人の選ぶものならばと心が動くのです。

現代の音楽は境界線があいまいで入り混じっている。僕は単純に、ジャズコーナーで売っているものはジャズだと思うことにしている。」終始こんなふうに進んでいく語り口が心地よく、安心してつぎのページを繰ることができます。

カラフルで、見る目にきれいなジャケットデザインを眺めるだけで幸せになれる一冊。気軽に手に取ることのできるビジュアルブックとしてもおすすめです。

(保田)