プレイアデスの手稿

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当店へは日々、色々の性格の書物たちが持ち込まれます。

燐光を纏うように美しいもの、古い時の匂いをページにたたんだもの、あっと驚く変わった風貌のもの。つい先ごろもまた、季節のほころびを知らせる南風に運ばれて、謎めいたノートの切れはしが表扉のすき間よりすべり込んできたようです。

手に取ると瞬間、ひやりと錯覚を催させる幾葉かの紙片には、どの国の文字とも知れない細かな書きつけと、ずいぶんと手の込んだ几帳面な挿画とが記されてありました。添えられたメモの表にはたった一行、「Codex_Pleiades」。これがこの、ひとまとまりの奇妙な手記へ与えられた名前なのでしょうか。

“第二極地観測所研究員・山石未明”と署名の入ったメモは、次のようにしたためられています。

『これらの手記は、南極・ドームふじ基地より更に三〇〇キロメートルほど離れた地点より発見されたものである。/そこには白い研究所のような小さな施設が建っていたが、誰が何の目的で建てたのか、また誰のものであったのかは定かではない』『大きな黒板のある部屋に、大量のノートが保管されていた。ノートは星の数ほどもあり、記述内容は多岐に渡った』『それらの大部分は暗号で書かれていたが、私はその一部の解読に成功した』

山石氏は文字の解読に成功していても、残念ながらそれの意味するところまでは把握できなかった様子です。それでも公開を思い切ったのには、ここに、何か地球の軸を揺るがす秘密めいた匂いを嗅ぎ取ったせいに違いありません。

当店としましても、この大いなる謎の解明に組するにやぶさかではありません。このように手稿の複製をみなさまのお目にかけることができるのを喜ばしく思います。人跡まれな南極大陸の片隅で、いったい何が起こり見つけられたのか。ぜひ本書『Codex_Pleiades』をお手に取って、驚嘆すべき事象のありのままを目の当たりにしてください。

(保田)